ラヴィ・ド・ボエーム

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<<   作成日時 : 2005/11/21 23:26   >>

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私はテレビが大好きである。帰宅して部屋の電気を点けると、何をするより前にテレビのスイッチを入れる。にぎやかな声が聞こえるとほっとする。決して集中して観ているわけではないのだが、テレビをつけると部屋が明るくなるし、それはまるで「ただいま」と声をかけると、必ず「おかえり」と言ってくれた母の代わりを無意識に求めているからのような気もする。
一人暮しを始めた当初、意外と寂しさを覚えなかった自分、それどころか却って気楽さを堪能している自分を意識して「ああ、私ってやっぱりクールで冷たい人間なのかもな…」と、かねがねうすうす身の内に感じていたことの裏づけを自ら取ってしまったような気がして、ちょっと淋しく感じたことがある。

転職をきっかけに実家を出て3年弱、体調を壊してその仕事を辞めた。一人きりで耐えなければならない(と思いこんでいた)時期で、もう心身ともに限界だった。なんとか最後の日まで勤め、夜遅く、暗い部屋に帰ってきた。
留守電のランプが点滅していた。
「もしもし〜お帰り…ごくろうさん。良く頑張ったね」
明るさを装ってる母の涙声だった。
それまで張り詰めていた気持ちがどっと崩れた。テレビも点けずにわんわんと、一人暮しを始めて、初めて泣いた。

今ではあの頃のことは母と私の間では、思い出話と化している。まめな母はその後もちょくちょくと留守電にメッセージを入れており、結構どうでも良いことが多いのであるが、時折留守電が一杯になって消さなければならなくなると、最初から聞きなおす。用が済んだものから消して行くのだが、どうでも良いメッセージなのに、母の声だけはどうしても消すことが出来ない。
さっきも母から電話があった。
相変わらず割とどうでも良いことだった。直接出たので、留守電にはならずに済んだ。
ちょっとほっとした。メモリはまだ大丈夫なようだ。











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